現実のモノの動きを数理でつかみ自在に操る-制御-を追求
モノやコトの動きを見つめ息吹を与える『制御』がメインテーマです.研究室には,ものガンダムのようなものすごい高性能なロボットや,SF映画さながらの人間の思考そっくりのAI,とてつもない高性能・高価な実験装置などはありません.このような派手さではないですが,常に本質を追及する姿勢で研究しています.
キーワード:制御,制御理論,制御応用,システム理論,データ駆動制御,モデリング,ダイナミクス,最適化等
研究テーマ
当研究室では以下のテーマを中心に研究しています.1~4は研究室遂行中のテーマ,5以降は金子の個人またはプロジェクト等での研究テーマです.
- データで挑む制御のアプローチ!データ駆動制御の理論と応用
- モデリング・制御・仕様の「インタープレイ」の謎に挑む!
- 制御の実応用:実産業における難攻不落の問題に挑む!
- さまざまな数理アプローチでシステムに挑む!
- システム制御の理論的諸問題―Unsolved Problems― に挑む!
- 振舞が全てを決定する…ビヘイビアシステム理論に挑む!ビヘイビアシステム理論で挑む!
モノを制御するためには,モノの動きを表す法則―数式モデル―を得る必要があります. しかし,そのモデルは制御対象の動きの情報を圧縮しており,また,実用的な 観点からは,そのようなモデル得るためには多くに時間やコストを費やすことが ほとんどです.ここでは,そのような理論的シーズと実用的ニーズから, データを直接用いて制御器を更新・設計するアプローチ―データ駆動制御について 数年間より理論・応用の双方から活発に研究をすすめています. 当研究室発の手法として,FRIT, ERITなどがあり,これらは少ないデータで 望ましい制御器を求める手法として今後の発展が期待されています.
モデルベースド制御では,モデルを得て制御器を得ます. 制御器を実装した結果,望ましくない結果であった場合,原因は 制御器が悪いのか?モデルが悪いのか?…定かではありません. そして,モデルでも制御器でもなく,実はそもそもの仕様がおかしかったのでは? ということも考えられます.このように,制御器を設計するには まず「何をしたいか」という仕様,その仕様と動特性を反映したモデル,モデルに基づいた制御、 そして制御結果に基づいた仕様の妥当性検証,という3つ巴の構造がありますが, これらの相互関係―インタープレイ―の核心をデータをプラットフォームとしたアプローチで 取り組んでいます.
制御は実際の社会や生活で役立ってこそ,はじめてその真価を発揮できるといえます. 一方で、実際の問題では,思い描いたようにモノが動くような状況はほとんど皆無です. そこには,現実として存在する不確かさ,非線形性,時変性はもちろんのこと,アクチュエータやセンサの限界, 極限までに高度に要求される仕様,目的としていることの妥当性への再検討など, 実にさまざまな観点から現実におけるさまざまな諸問題をクリヤーしなければなりません. そのような問題をクリヤーすることで,真に役立つ制御の手法を組み立てていきたいと考えています.
システムを解析するには,実数と四則演算で展開する世界のみでなく 暗号などのmod演算や,符号における有限体,スケジューリング問題におけるMax-Plus代数系, 有限値の制御のためのアーベル群など,さまざまな数理体系で考えることのできる世界があります。 制御と計算機科学や情報科学といいった異分野との融合発展するためにはこのような 新しい観点も必要です. まだスタートしたばかりなのですが,これまでとは異なる新しい地平を目指して 研究をすすめたいと考えています.
システム制御の分野には,いまだ解くことのできない未解決問題がたくさんあります. たとえば,3つの制御対象を1つの制御器で安定化するという同時安定化問題がありますが これは「解けるか否か」を判定することができない,ということが示されています. しかし,「どういうときに判定可能か?」ということはまだ未解決です. また,別の興味深い問題として,与えられた仕様がフィードバック制御で実現できるか否か という「制御はどういうときに「フィードバック」で実現できるのか?」という 制御の根源的なことも実はまだわかっていません. その他,多次元システムの消散性と蓄積関数の関係や, 補間問題におけるMost Powerful Unfalsified Models(MPUM)の構成問題, など,未解決な諸問題にも興味をもち,取り組んでいます.
システムの入出力関係を仮定せず,変数がとりうる振舞(ビヘイビア)に着目し システム理論に取り組むビヘイビアアプローチがベルギーのJan.C.Willemsにより提唱されました. その理論体系の美しさ,一般性,俯瞰性,そして,さまざまな理論構築における 証明のスマートさや自己完結性に感動し,金子が博士課程当時から今に至るまで 研究を続けています.数理的趣向の研究で,物事を前提条件を取り払い 自由な気持ちで,合理的にきちんととらえ,本質を追及するという心構えは, 研究分野は違ってもいまでも影響を受けています.